第Ⅱ期

記憶障害や意欲障害がいっそう著しくなり、さらにあらゆる精神機能の障害が加わり、アルツハイマー病の典型像が示される時期です。
コルサコフ型記憶障害は高度となり、学習機能はほとんど失われるため、経験・体験したことは短時間のうちに忘れてしまいます。病気の進行とともに、経験の保持が瞬間的にしかできなくなり、瞬間人と呼ばれています。食後すぐに、まだ食事をしていないといって騒ぐなど、高度の記銘障害による異常行動が目につきます。

また一般的にいえば、言語性記憶や時間の記憶、場所の記憶の障害が強く、視覚性記憶の障害は軽度です。たとえば、担当の医師の顔はよく覚えているのに、名前は覚えることができない、ということはよくあることです。感覚の違いによって記憶障害の程度に差がみられるのですが、経過の進行とともにその差はなくなってきます。
遠い過去の記憶も障害を受けるようになってきますが、近時記憶(記銘)の障害に比べれば、程度は軽いのが通常です。つまり過去の事実は断片的に残っていることが多いといえます。近時記憶障害と遠時記憶障害の程度に不一致があるためなのか、あるいは別な理由によるかはわかりませんが、過去と現在が混在してしまう状態が出てきます。自分が昔の世界に生きており、まだ両親が生きているとか、会社には今でも出勤しているとか、まだ結婚していないなどと述べ、家族が困惑することがよくみられます。患者には時間経過の体験がないかのようにみえます。

意欲や自発性の障害も著明になり、ぼう然として、何もやる気もなく、無欲状態で日々を過ごしているようになります。まわりへの関心も興味も失われて、表情は無表情となり、すべてに活気がなくなってきます。
以上は第1期に引き続きみられる症状ですが、新たに種々の精神機能障害が出てきます。
とくに中心となるのは失語、失行、失認といわれている症候群です。