不安、焦燥、幻覚、妄想

不安、焦燥
認知症患者では不安をともなう焦燥感がしばしば出現する.ことに夕方五時頃になると、居ても立ってもいられない耐えがたい焦燥感におそわれることがある。これを、
「黄昏症候群」と呼んでおり、認知症患者に特徴的な症状である。
側夜間せん妄l昼間は無表情でじっとしている認知症患者でも、夜になると目をらんらんと輝かせて動き回ることがある。これを夜間せん妄といい、認知症患者の約六○%にみられる。急激な環境の変化、不安、恐怖、怒りをともなう心理的な要因、さらには、脱水、低栄養、感 染、発熱などの身体的ストレスが誘因となって発症する。

 

幻覚、妄想
認知症患者では病状が進行すると幻覚を示すことがある.認知症患者では「幻
視」が多いのが特徴である。なお、精神分裂病では「幻聴」が多く、非現実的で不気味さがともなうのとは対照的である。また金銭や物に対する執着が強く、妄想は被害的で、自分のお金や貯金通帳がみつからない時に、しばしば「盗まれた、取られた」と発言する。

 

俳梱
認知症老人にみられる異常な行動の一つで、在宅の認知症老人では約一○%の頻度で
ある。ひとたび出現すると介護者の心身の負担は大きく、家庭崩壊につながるおそれがある。
さまざまな背景で俳個が起こると考えられるが、言語による意思の疎通が得にくいので、真の原因を確認することはかなりむずかしい。単なる空腹や身体的な要求から俳個が生じる場合があるが、すでに会社を定年退職したのに朝になると会社に行こうと衣服を整え、鞄を提げて実際に出かけるなどの症状もある。最も多いのは無目的で衝動に駆り立てられるように排掴することで、おそらくは幻覚の恐怖感から逃れようとして排掴するのだと想像されている。