不安・焦燥感


認知症高齢者は寸前の出来事を忘れます。今後の見通しもつけられません。また、時間も季節も自分のいる場所もはっきりとしなくなります。さらに周囲との関係もわからなくなってきます。そうした状況の中にいる認知症高齢者は、些細なことで不安や焦燥感におそわれます。ことに、認知症状態の軽度から中程度のころに、不安や焦燥感が強くなる傾向があります。そのためにひどく混乱したり、落ち着かなくなったり、不機嫌になったりします。

よくみられることですが、きまって夕方になると落ち着きがなくなり、不安や焦燥感が現れるお年寄りがいます。「夕暮れ症候群」などといっておりますが、認知症高齢者は、一日中よく理解できない状況の中で不安や緊張の時を過ごしています。そのため夕方には疲れてくるのであろうといわれています。
一方、介護者も、夕食の準備などできぜわしくなり、お年寄りへの配慮が十分できなくなります。さらに、夕闇がせまり学校や外から孫たちが一戻ってきたりして、家のなかの雰囲気が変わります。認知症高齢者は、自分の家にいるのに、違うところにいるように思ってしまいます。「お世話になりました」とか「仕事がおわりましたので帰らせていただきます」「子供が帰ってくるから、私もそろそろ帰るわ」といって家から出て行こうとします。
また「お米がない、どうしよう」と困惑しきったり、裸になったり、「おつかさんとおとっさんがど
っかへ行ってしまった」と泣き出したりします。夕暮れどきは、認知症高齢者が最も不安になる時刻です。
夕暮れどきの不安や焦燥感は普通一’二時間でおさまります。夕食がすむと、ほとんどのお年寄りが落ち着きます。認知症高齢者の不安や焦燥感を軽くするためには、夕食前のひとときを、お年寄りと一緒に過ごせるような配慮が必要になってきます。

そのためには、夕食の支度を昼間しておいて、お年寄りが不安になる時間は、一緒に過ごすようにします。もちろん介護者一人で頑張らないで、家族の協力を得るようにします。