血圧の測定

血圧の測定は座った状態で行うことである。降圧薬を使用中の老齢の患者で、ふらふら感、めまいなどを訴える場合に、ベッドに横になった状態と椅子に座った状態とで血圧を比較してみるとよい。横になった状態で血圧がちょうどよくコントロールされているようにみえても、椅子に腰掛けてみると血圧がかなり低く、低血圧になっている場合がある。このような患者では降圧薬を中止したり減量することによって、認知症に似た症状が軽くなることがある。人間は起きて活動する動物なので、血圧のコントロールは少なくとも座った状態で測定しなければならない。寝た状態で正常の血圧を示す高齢者では、起き上がった時にはむしろ低血圧になる(起立性低血圧)かもしれないので注意が必要である。
 

 


パーキンソン病の治療薬の一つである中枢性の抗コリン薬は、時に認知症に似た症状を起こすことがある。アルツハイマー病の患者の大脳皮質では、アセチルコリンが減少しているが、抗コリン薬はアセチルコリンが働くべきレセプターを遮断する。だから、抗コリン薬を使いすぎると大脳皮質のアセチルコリンの量は正常にあっても、その働くべきレセプターがこの抗コリン薬によって遮断され、アセチルコリンが働くことができなくなる。そのためにみかけ上、痴呆に似た症状が出てくる場合がある。早い時期に抗コリン薬をやめ、アセチルコリンがレセプターに働くことができるようになれば、元の状態に戻すことができる。