失語症と左半側空間失認


大脳皮質の左半球には、言語野(ブローカ運動性言語野、ウェルニッケ感覚性言語野)があるので、この部位に脳梗塞脳出血が起こると失語症を生じる。自分の思ったことを言葉として表現できないのが運動性失語症、人から話しかけられても音としてはわかるが、言葉として理解できないのが感覚性失語症である。


特に問題となるのは運動性失語症で、たとえば患者が問いを正しく了解したとしても、正確に返事を表現することができなければ、診察する人や観察する人にとっては、あたかも知的機能が落ちているように誤解される場合があるからである。つまり、問いに対して返事ができないからといって、知的機能が下がっていて認知症であると考えるのは誤りである。

一般に失語症の患者は、左大脳半球の脳血管疾患が多く、しかも脳血管障害の部位が、典型的な半身マヒを起こす場所ではなく大脳表面近くにあるので、右半身の不完全マヒをともなうことが多い。逆にいえば、完全マヒではなく右半身の不完全マヒを起こしている脳血管障害患者においては、失語症の可能性も考えておく必要がある。



大脳の右半球の頭頂葉後頭葉の境界部分には、空間を認識する部位がある。したがって右大脳半球の障害なので、左半身の不完全マヒをともなうことが多い。症状を客観的にみつけるのは比較的簡単で、家の絵や花の絵を模写してもらうと、画面の左半分の
一部が欠けたようになった絵を描く。
左半側空間失認の患者は左側にあるものに気づかないので、物にぶつかったり物を探したりするために知的機能が落ちているように誤解されることがある。また、本人の左側から話しかけられた場合には、どこから話しかけられているのかを理解できず、あたかも認知症症状があるかのようにみえることがある。

 


左半側空間失認の患者は、右側半分の空間の認識に関してはまったく問題がないので、患者が左側の認識ができないということを介護や治療に携わる人が理解し、右側から話しかけるな ”10日どの工夫が必要である。