お年寄りが納得する言葉

認知症のお年寄りの自尊心を傷つけない好ましい接し方としては、老人が間違った行動をとっても、危険を伴わない状況であれば、叱らない、否定しない、訂正しない、理屈ぜめにしない、説得しない、強制的な指導をしないことです。知的な心の働きが衰えた結果の行動です。間違った行動をそっと補い、事故や感染などから守るための環境への配慮を優先することが大切です。


お年寄りがネガティブな状況のときは、身体的な不調が原因のこともありますが、介護者の言動がお年寄りの自尊心を傷つけていることがあります。したがって、お年寄りを尊重し、自尊心を高めるような援助が大切です。
認知症のお年客割りは、自分を変えて相手に合わせることができません。お年寄りを頑固だと非難しても、介護はうまくいきません。柔軟で臨機応変な態度で、お年寄りに合わせることが望ましいことです。介護者の接し方でお年寄りも変わります。お互いの関係がよくなると、介護者のストレスは軽くなります。



食事をすませたばかりなのに、食べてないと何回も催促にくるお年寄りに、「一時間前に召し上がったのよ」と話しても、お年寄りは体験したことのすべてを忘れているので納得しません。「畳ご飯の支度をしていますから、少しお待ちください」と話したほうが効果的です。また、「あんた、そこにいてだれがご飯つくっているの」などと言うお年毒瓢りもいます。
このようなときは、お年寄りのそばを離れて台所に立つようにするとよいでしょう。



二十数人のお年琴南りとバスで墓参りに行ったときのことです。帰りにファミリーレストランでチョコレートパフェを食べて、ホームに戻りました。「皆さん、園に着きましたよ。降りてください」「皆さん、お畳のご飯ですよ。降りましょうね」。寮母の誘導でお年毒5がバスから降りました。一番後ろの席にいた九一歳のNさんが降りて来ません。
寮母が迎えにいったら、「俺はいやだよ」と笑っています。「困ったわね」。寮母は行ってしまいました。Nさんが納得する言葉かけって何だろうと思いながら、「Nさん、終点よ」と声をかけたら、「ああそうか」と真面目な顔でバスから降りました。